健一は、家に帰るとベッドに横になり、静かに目を閉じた。瞼の裏には笑顔の杏子。そして美穂の言葉。
「あんたそれでも男なん?杏子が好きなんやろ?そんなんで諦めるやね。
結局、忘れられへん人のことを『俺が忘れさせてやる』って偉そうなこと言って、こんなことで諦めるくらい軽い気持ちやったんやね。
ほんま最低!」
一字一句消えずに脳裏に焼き付いた言葉は、消えることはなさそうだった。
―――最低やな・・・俺。
「なんで黒谷くんはプールの裏なんかに居てたん?もしかして、知ってたとか?」
―――まさかな。でも、なんであんな人気のないところにいてたんや?江坂の言っていたことがほんまやったら・・・。
健一の頭の中では次々と問題が出て来て、自分でも整理がつかなくなってきていた。