「じゃあ、また明日ね。バイバイ」


杏子は電車通学で、美穂は自転車通学だが、いつも駅まで一緒に帰る。

しかし今日は、美穂は彼氏とデートらしく、杏子はフラれてしまった。


―――いいなぁ・・・彼氏がいて。


杏子もどうしても彼氏が欲しいとまではいかないが、友達から彼氏の話をされると、羨ましく思うようになっていた。


そして、周りにも恋人たちが仲良く歩いている。


はぁ・・・。


思わずため息をついた時、後ろから呼び止められた。


「岡崎さん!」


振り返ると、そこには隣の席の黒谷が立っていた。

黒谷とは席が隣ということもあり、よく話すようになっていた。


「今日は一人?江坂さんは?」


「美穂は彼氏とデート。友達より彼氏が大事なんよ」


杏子が少し膨れながら言うと、黒谷は目を細めた。


「そっかぁ、じゃあ、俺、駅まで一緒に行っていい?」


「いいよ〜」


杏子は、特に何とも思わず、黒谷と駅まで一緒に帰ることを了承した。