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「うわぁ。あの人きれい!」
「あれ、桜木先輩やん!」
「相変わらずきれい」
そんな声を浴びながら、彼女は廊下を歩いている。
数日前に3年の時の担任から同窓会委員の仕事があるから、時間があるときに学校に来るように言われていた。
今は、お昼休み中。
そして、彼女はある人物を捜していた。
「桜木先輩!」
「あら、山上くん」
後ろから呼び掛けられ振り返ると、生徒会で一緒だった山上くんが嬉しそうな笑顔を浮かべて立っていた。
「今日はどうされたんですか?」
山上は、とても丁寧な話し方をする。
典型的な生徒会役員タイプ。
すごく真面目で、成績もトップクラスである。
「同窓会委員の仕事で呼び出されたの」
そう、彼女は当時の担任からの推薦で同窓会委員に任命された。
なんだか面倒だと思ったが、先生に頼まれると断れなかったのだ。
「そうですか」
―――そうだ、山上くんに聞こう。彼のこと。
「ねぇ、山上くん。1年生の眞中くんって何組かわかる?」
山上は3年だが、彼女には、きっと彼のことだから知ってるはず、と根拠もない自信があった。
「確か、5組だと思います」
―――さすが山上くん!
さらっと出てきた回答に、彼女が笑顔で返すと、山上は顔を赤くしていた。
「ありがとう」
それだけ言って、彼女は山上を置いて、目的地に向かった。
再び歩き始めると、挨拶をしてくれた子達に「こんにちは」と笑顔で返す。
いい加減、表情筋がつってきそうだった。