「健一、ため息ばっかりついてたら幸せが逃げていくぞ!」
佳祐は授業が終わると健一の肩を叩きながら言った。
健一は、杏子に謝る言葉も機会も見つけることもできず、昼休みになっていた。
「眞中く〜ん」
健一が、学食から戻って来るのを待っていた女子が、群がってくる。
しかし、健一はいつも以上に無視を決め込み、笑顔を作ることさえやめていた。
勝手な話ばかりするのを聞き流し、窓の外をぼんやりと眺めた。
空は健一の心に反して、風もなく澄み切っていた。
空を飛ぶ一羽の鳥を目で追っていた時、遠くの方から騒がしい声が聞こえてきた。