その日の放課後、美穂は委員会があるので、杏子は一人で帰ろうとしていると、後ろから声を掛けられた。


「岡崎さん!」


その澄んだ声に振り返って、目の前にいた人物に杏子は目を真ん丸にして驚いた。


―――原田さん・・・。


目の前には、容姿端麗、トップ入学するほど優秀な、原田沙知が立っていた。



―――原田さんがなんで、私のこと知ってるの?


そんな杏子の頭の中を読むように沙知は口を開いた。


「岡崎さんも体育委員やんね?」



―――『も』ってことは、原田さんも?あいつが側にいたから、周りが見えてなかったんや・・・最悪。


「あ、うん。原田さんも?」


杏子が、申し訳なさそうに言ったことで、沙知は状況を把握したと同時に、自分の名前を知ってくれていたことが嬉しかった。


「私の名前知ってくれてたんや」


―――そりゃ、学年トップの成績ですから・・・。

それにしても、かわいいなぁ・・・女の私でも惚れてしまいそう。



「岡崎さん?」


ぼんやりと自分の顔を見られていたので、沙知は杏子の顔を覗き込んで聞いた。


「あ、ごめん。考え事してた」


杏子は慌ててそう言うと、沙知はニッコリと笑って返してくれた。


その笑顔に杏子は吸い込まれそうになった。


クラスの男子が沙知の噂をしているのが理解できた。