杏子が自己紹介をしているのを聞いて、思わず目を見開いた男がいた。
入学してすぐにありがちな自己紹介もわずらわしく、耳も貸していなかったが、ある杏子の名前が耳に入ってきて、振り返らずにはいられなかった。
―――岡崎杏子?
しどろもどろになりながら自己紹介をしている杏子の姿を捉えた。
彼は、杏子が笑った時にできる口元のえくぼと優しい目を見て、確信した。
杏子の自己紹介が終わると再び外へ目をやった。
彼は、冷静を装っていたが、自分の知っている彼女とは変わった姿を目の当たりにして、かなり動揺していた。
―――変わりすぎやん・・・。
しかし、そんな動揺は見せずに、自己紹介をした。