「健一、今日はよろしくな!」
待ち合わせ場所に現れた佳祐は、かなり機嫌がよかった。
逆に健一は、この日が憂鬱で仕方なかった。
―――あいつ、断ると思ったのに。
健一は、もしかして杏子も佳祐のことが好きなのではないかという思いを持ち始めていた。
チケットを購入して、ゲートをくぐると、カップルや家族連れでごった返していた。
ゴールデンウィーク真っ只中の晴れた日だから混んでいるのは仕方ないか・・・と思いながら、健一は鉛のような足を前に進めた。
「このあたりで待ち合わせてるんだけどな・・・」
佳祐が独り言のように言いいながらキョロキョロとしているのを見て、同じように周りを見渡した。
しばらく待ち人を捜していると、二人の方を向いて手を振っている姿が見えた。
「佳祐〜!」
手を振っていたのは美穂で、大きな声で佳祐の名を呼んでいた。
―――えっ、けいすけ?
美穂が佳祐の名を呼びながら駆け寄ってくる状況が飲み込めずにいるのは、健一だけではなく、美穂に手を引かれて走ってい杏子も同じだった。
「佳祐、眞中くん、おはよう」
ニッコリと笑う美穂の隣にいる杏子は眉間に皺を寄せていた。
杏子は、健一と一瞬目が合うとすぐに逸し、美穂に「ちょっとどういうこと?」と詰め寄っていた。
―――あれ、こいつも状況を飲み込めてないな・・・ってことは、俺が来ることを知らなかったのか?
健一があれこれ考えていると、美穂は佳祐の隣に並び、「じゃあね〜」と言って、二人で立ち去った。
残されたのは、何がなんだかわからない健一と杏子。
二人は、は佳祐と美穂の後ろ姿をしばらく見つめていた。
―――えっ、何?意味わからんし・・・。あいつらどういうつもりや?
目の前の取り残されている杏子に目をやると、まだ放心状態で目が点になっていた。