「じゃあ、また明日ね」
放課後、美穂は杏子と駅で別れた後すぐに、呼び止められた。
「美穂」
振り返るとそこには、強張った表情の佳祐がいた。
美穂は、呼び止められた理由がすぐにわかった。
―――眞中くんから聞いたんやね。
「ちょっといい?」
美穂は、佳祐の言葉に静かに頷いた。
近くの公園に向かう二人には会話はない。
同じ中学出身で中学の時は仲が良く、よく遊んでいたとは思えないくらい、よそよそしい雰囲気だった。
公園に着くと美穂は自転車を止めて、佳祐が座っているベンチに少し距離をおいて座った。
なかなか佳祐は話し出そうとしないので、気まずい沈黙が続く。
子供達の遊ぶ声などは聞こえず、静まり返っていて、雲一つない青い空だけが二人を見つめている。
―――話があるって呼び出しておいて喋らんって意味わからんし。
美穂は、ベンチにもたれて座っている佳祐をちらっと見た。
佳祐の表情は、怒っているようだったが、何か思い詰めているようにも見えた。
「佳祐、杏子のこと本気じゃないやろ?」
美穂は、我慢が出来ずに沈黙を破った。
「美穂には関係ないし」
佳祐は表情を変えずに抑揚もなく言い放った。
「関係あるよ!友達やもん!」
「・・・それだけ?」
覗き込むようにして見ている佳祐の顔が寂しそうだった。
「それだけって・・・?」
佳祐は一つ大きなため息をつき、大きく開いた脚に肘をつけて、前屈みになり、前を見つめて言葉を発した。
「美穂、滝沢先輩とはうまくいってるんか?」
「はぁ?佳祐、話がすりかわってる!」
「うるさい!答えろよ!」
姿勢は同じで顔だけ向けた佳祐の顔があまりにも真剣で、美穂は言葉につまった。