「佳祐、顔貸せや!」
健一は、席に着くなり乱暴に鞄を置き、佳祐に言った。
「なんやねん?」
「いいから来い!」
明らかに怒っている健一の表情を見て、佳祐は動揺はしていなかった。
「眞中く〜ん、おはよう」
健一の席にいつもののように杉村がやってきた。
健一は、杉村を無視し佳祐と教室を出て、体育館裏へ連れていった。
健一んのただならぬ雰囲気を感じて、前から歩いてくる者は避けるように道をあけた。
そして、人気のない体育館裏に着くと足を止め、向かい合った。
「お前、岡崎のこと本気じゃないんやろ?」
「はぁ?」
「江坂さんが、『本気じゃないんやったら、弄ぶな』って言ってたぞ」
江坂という名前に佳祐は一瞬動揺したが、すぐに健一を睨み返した。
「健一には関係ないし」
「・・・まぁな」
佳祐の言葉はに言い返すことが出来ずにいた。
「じゃあ、俺が誰を狙おうといいやん。じゃあ、俺、教室戻るから」
佳祐は、冷たく言い放ち健一の前から立ち去った。
―――なんやねん、佳祐!なんであいつのことが好きやねん。
健一は、拳を握りしめて、その場に立ち尽くしていた。
の日一日、二人は言葉を交わさなかった。