次の日、健一と佳祐が歩く前を杏子が歩いていた。

杏子の姿が見えた途端、佳祐が駆け寄った。


「岡崎ちゃん、膝大丈夫?お風呂とかしみたんじゃない?」


「うん。痛かった・・・」


笑って話す二人を見て、健一はイライラしていたが、二人の会話に入ることもできずにいた。


―――くそっ!佳祐の奴ヘラヘラしやがって。



「あの二人、仲いいね」


そう言って佳祐の後ろ姿を睨んでいた健一に声を掛けたのは、美穂だった。


―――確か、あいつといつも一緒にいる女やんな・・・江坂とかいったけな。


健一が何も答えないのを気にも留めず、美穂は続けた。


「佳祐に言っておいてくれる?杏子のこと本気じゃないんやったら、弄ぶのやめてって。ちなみに私は、江坂美穂。眞中くん、杏子のことをよく見てるから知ってるかもしれないけど」


「えっ?」


いろんなことに驚き、動揺している健一は何も話すことはできなかった。


そんな健一の表情を見て「ふっ」と笑うと、美穂は「じゃぁね」と健一の前を歩き始めた。



―――俺があいつのことを見ているのがバレてる。なんてことだ。


いや、そんなことよりも、本気じゃないってどういうことや?

弄ぶってどういうことや?

佳祐、どういうことや?




健一は再び、前を歩く佳祐の背中を睨みつけた。