「あっ!隆博くんに乗せて来てもらったんやった!」


「隆博?誰やその男!」


聞き慣れない男の名前に、健一はあからさまに焦りを見せた。


「学校で会ったやん!」


―――学校で会った?誰や?


健一の中で嫌な記憶がよみがえった。


「あー!あの男?!」


「そうそう。いとこの隆博くん」


健一は、伝えられた事実を確認するように、もう一度質問した。


「いとこ??」


「そう、お母さんのお兄さんの子供」


「彼氏じゃなくて?」


「彼氏?なんでそんなことになるん?」


そう言う杏子は、不機嫌そうに健一の顔を見つめていた。


「だってよ・・・『会いたかった』とかさ、いとこでは言わんやろ!今思い出しただけでも腹立つし!」


「ほんま、そんなんじゃないし・・・ただのいとこやから」


呆れ顔で健一に言ったが、続けた。