「杏子、好きだよ」


「私も・・・」


気持ちが通じて、見つめ合う二人には言葉はいらなかった。

どちらともなく近づき、唇を重ねた。


触れるだけのキスをすると、二人は再び見つめ合い、すれ違っていた時間を戻した。


「あぁ・・・嬉しい」


ため息混じりの声で言う健一は、満面の笑みだった。


「待たせてごめんね」


この甘い雰囲気は、杏子を素直にさせていた。


「3ヶ月と20日やな」


「何が?」


突然出した数字が何を表すのかがわからず、杏子は首を傾げてした。



「お前が俺に惚れるまで。つまり、入学式から今日まで」


「それやったら、間違ってるよ」


「はぁ?」


少し笑みを浮かべながら杏子が言った言葉の真意がわからず、首を傾げて答えを聞こうとした。


「もう少し前から、好きやったからね」


「いつ?」


「秘密」


杏子は頑なに答えようとはしなかった。


「隠し事、反対!」


健一がおどけて言うと、『しかたないなぁ』とでも言いたげな顔で、

「また今度教えてあげる」

と言った。


「ほんまやな?」


「さぁね」


最後までとぼける杏子には、『もういいや』と追求するのを諦めた。


「それよりお前、ここまでどうやって来たんや?」


ふと湧いて来た疑問を問い掛けると、思い出したのように椅子から立ち上がった。