「ねぇ・・・なんとか言いなさいよ!」


杏子の声は、病室の壁に吸収されるように消えていった。


「冗談やろ?ねぇ・・・」


ベッドに近づき、布団の膨らみに手をついて、縋り付くように、声を掛けて泣いた。

それでも、健一からの返事はなく、布団に顔を埋めて、泣き声を漏らした。



「なんでよ・・・なんで?私のことを守ってくれるんじゃなかったん?あれは嘘?ねぇ・・・なんとか言いなさいよ・・・」


力任せに健一の体を布団の上から叩いたり、揺らしたりしたが、全く返事がなかった。



「私・・・あんたに言わなあかんことがあるのに・・・聞いて欲しい・・・

受け止めて欲しい想いがあるのに・・・

私・・・あんたが好き・・・眞中健一が・・・好き!!」



杏子の言葉は、病室に響くと静かに消えてしまった。


しばらく、布団に顔を伏せたまま動けないでいると、頭を優しく撫でる柔らかい感触に気付いた。


―――あぁ、もうあかん・・・あいつに頭を撫でてもらってる感覚がある・・・そんなはずないのに・・・。


「もう泣くなよ・・・」


―――あぁ、幻聴まで聞こえる・・・


「なぁ、いつまでそうしてるん?」


―――いつまでって・・・あんたが戻ってくるならいつまでもこうしてるよ・・・・・・・えっ?


慌てて布団から頭を上げて、杏子声のする方を見た。