一方、健一と今日この様子を見ていた佳祐は、ニヤニヤしながら健一に話しかけた。
「健一、おはよう」
「なんや佳祐、ニヤニヤして気持ち悪いな」
「朝から鬼ごっこしてるの見たで」
誰かに見られてるなんて思ってもなかったので健一は、驚いて言葉が出なかった。
「あれはその・・・」
「お前が女の子を追い掛けるなんて想像がつかへんかったから、びっくりしたよ」
「・・・・・・」
「まぁ、どっちにしても仲良くしないと、あいつに取られるで」
佳祐はそう言うと、視線を仲良さそうに話す杏子と黒谷の方へ向けた。
「俺は別に・・・」
「ふぅん」
佳祐の意味ありげな返事に健一は、文句の一つも言いたかったが、ムキなりそうだったので止めた。
―――あぁ、なんであいつのことになったら冷静さを失うんや。
とりあえず気分を落ち着かすために、静かに席に着き、外を眺めた。
雨上がりの空からは眩しいくらいの太陽が出ていて、健一を見て笑っているようだった。
―――何をしてるんだか。
健一は、溜息を一つつくと、机に突っ伏した。
「眞中くん、おはよ~。どうしたの?」
健一のとって煩わしい声が聞こえてきたが、無視をして一人の世界に入り込んだ。
目を閉じると、あの時の杏子の笑顔が浮かんできた。
俺は、あの笑顔を見たくて、あいつを笑わせた。
少しでも俺の方を向いて欲しくて、話しかけた。
そして、あいつを守るため、奴らの盾になった。
全部、あいつのため。
大好きなあいつため・・・・・・。