外では蝉の声が激しく泣き続けている中、冷房の効いていない体育館では、校長の長い話が続いていた。
「先日新聞を読んでいたら、このような記事がありました・・・」
体育館中からは、「早く終われ〜!」という声があらゆる所か、聞こえてきそうだったが、この長い話が終われば夏休みが待っているといった期待感が、生徒たちを我慢させているようだった。
杏子は、今朝久し振りに見た健一の姿を思い出した。
それまでは、少し明るく染められた髪が風に揺れる様子が印象的だったが、今朝会った時には、驚くくらい印象が変わっていた。
「あっ、髪・・・」
「気付いた?」
―――そりゃ気付くやろ。
髪は黒に近い色に染められていて、かなり短くなっていた。
しかもその髪型が似合っていて、今までのどこかミステリアスな雰囲気から、爽やかな感じになっていた。
「どうしたん?」
「イメージチェンジ?」
「イメージチェンジするには、おかしな時期やけどね」
「ははは、そうやな。終業式やもんな。まぁ、イメージチェンジっていうか、お前の黒髪がなんか羨ましくてな」
そう言いながら、杏子の髪を少し取って、指に巻きつけていた。杏子の心拍数は一気に上昇し、顔まで真っ赤になった。
―――なんであんなことを平気にできるんだろう。信じられへんし・・・。
教室に戻ってからも、これまでとは違った健一の横顔を見て、笑みを零していた。
―――短い方がいいやん。今までは、ホストみたいやったし。
杏子は、一人で納得しながら、配られたプリントなどを片付けていた。