「へ〜愛されてるね〜」


「あの眞中くんをそこまで惚れさせるとはね・・・」


話を聞いた2人は口々に思ったことを口に出していたが、杏子は聞いていないふりをしていた。


「でもさ、眞中くんをフッたってことは、杏子は他に好きな人がいるん?」


理香の質問に、沙知が思い出したかのように口を開いた。


「前に話してた、忘れられへん人?」


「ふふふ・・・」


怪しげな笑みを浮かべる美穂を再び杏子は睨んだ。


「何?美穂は知ってるん?その人・・・」


「知ってるもなにも、杏子の忘れられない人は、眞中くんなんやもんね?」


全てを話してしまった美穂に、杏子はため息をついていた。


そして目の前には、意味がわからないといった表情の2人がいた。


「杏子は昔の眞中くんが好きなんよね?」


「も、もういいから・・・」


「まっ、いろいろありそうやけど、杏子ばっかり攻めたら、かわいそうやんね」


沙知が杏子の限界を感じて、過去を掘り下げるのを終わりにした。


「聞きたいけど、まぁ、今日は許してやろう!」


理香が時代劇ばりの言い回しでこの話に終止符を打った。


「で、美穂は?どうなん?」


「わ、私はいいから・・・」


自分だけ逃げようとする美穂を杏子が見逃すはずもなかった。


「美穂はね・・・」


「あーいいって!」


杏子の声を遮るように邪魔をしたが、3人の圧力には勝つことはできず、さっきまでの自分の行動を後悔した。


その後も、恋の話で盛り上がり、夕方まで話し続けるのであった。


「うわっ、暑い・・・」



数時間、冷房の効いた店内で過ごした4人には、真夏に近い暑さは体には厳しかった。