「新入生代表挨拶、1年1組、原田 沙知」
進行を務める教頭に呼ばれた、新入生代表の彼女が、凛とした表情で歩く姿は美しかった。
美人でスタイルも抜群。杏子は、何一つ勝てていないような気がして、再び溜息が出た。
「あの子って入試でトップやったんやね」
ヒソヒソと美穂が隣で耳打ちする。
新入生代表の挨拶はトップ入学の生徒が務めることになっている。
『天は二物を与えず』なんて嘘だ。
今日ほどこの言葉の真意を問いたいと思ったことはなかった。
何をやっても中途半端な――しいて言うなら『中の上』――自分と、舞台上の彼女を比べてしまうこと自体、馬鹿なことなんだと思い、杏子は無駄な労力を使うのはやめた。