家庭科室に着くと、体育委員会はすでに始まっていた。

二人は、みんなに注目されながら席に座った。


「お前ら、遅いぞ!早く座れ!」


「すみませ〜ん」


顔を見合わせて笑うと、席に着いた。


「2学期が始まったら、体育祭があるから、今日はその話をするために集まってもらった」


前では体育教師の中西が話を進めていた。


隣で何かを書いている健一の奥に見える中西を見ていた。


―――体育祭かぁ・・・。楽しみやな。


「これ」


今まで下を向いていた健一に渡された紙切れに、目を落とした。

そこには携帯番号とメールアドレスと『夏休み、遊びに誘っていい?』と書かれていた。

男っぽい文字の割に整っていて、しかも少し弱気な文章のアンバランスさに、笑いを堪えるのに必死だった。

そんな杏子を見て健一は、さっき渡した紙を奪い何やら書くと、こちらへ置いた。


『笑うな!』


そんなことを書かれると、余計に笑いが込み上げてくるのが人間の心理。

目の前に座っている隣のクラスの委員の子を気にもせず、ニヤけるのを堪えて、二人の会話を続けていた。



「それじゃ、新学期が始まったら、具体的な話を進めるから、実力テストが終わったら、ここに集合するように。では、今日は終わり」


中西の力強い締めの言葉を聞くと、一斉に全員が立ち上がった。


「なぁ、帰ろうか」


声を掛けてきた健一は、心なしか楽しそうだった。


「ごめん。今日は予定があるんよ」


「そっかぁ・・・じゃあ、下まで一緒に・・・」


「眞中く〜ん!一緒に帰ろう」


健一は、少しがっかりした様子で、何かを言おうとしていたが、群がってきた子達の声にかき消されて聞こえなかった。

そして、困った様子の健一を見ると、杏子は苦笑いを浮かべて、沙知の元へ急いだ。