健一杏子の関係は、なかなか縮まらないまま7月に入り、もうすぐ期末テストが始まる時期になっていた。
噂は、収まる気配はなく、さらにエスカレートしていた。
以前の健一なら弱音を吐いてしまいそうだったが、今は杏子が近くでいてくれくから大丈夫だった。
―――俺は、あいつさえ信じてくれてたらいい。
健一がそう思っていたある日の昼休み、杏子の一言で教室が騒然となった。
「そんな噂、嘘に決まってるやん!誰か、あいつを信じてあげなあかんやん!だから、他のみんなが信じなくても、私だけは信じてるの!」
騒がしい昼休みの教室が一気に静まり返り、杏子が涙をすする声だけが響いていた。
健一と佳祐は、突然聞こえた叫び声にも似た杏子の声に驚いて、駆け付けた。
「もう泣くな」
そして、健一は泣き続ける杏子の頭をトントンと優しく叩いた。
「佳祐、あと頼んでいいか?」
「あぁ・・・うん」
佳祐も急に振られて驚いていたが、すぐに状況を把握していた。
「杏子ちゃん、行こう」
そう言うと、健一は杏子の手を引いて、教室を出た。
廊下には、たくさんの生徒がいて、健一たちの様子を見ながら、ヒソヒソと話をしていた。