「なによ!太ってて何が悪いんよ!私はね、おばあちゃんからずっと『人を見た目で判断したらあかん』って言われて来たんよ!
それにね、ガッくんはね、強くて、いつも私を守ってくれて、私を笑わせてくれて・・・私はそんな彼が大好きなんよ!」
言い切った後、杏子は、自分の言ったことに恥ずかしくなったのが、顔が真っ赤になっていた。
「眞中、お前相当愛されてるな」
ニヤニヤしながら、猿渡に言われたが、健一は複雑だった。
「これが今の俺に対する言葉ならいいんですけどね・・・」
ため息混じりに言う健一に猿渡たちも何も言わなかった。
「ごめんね・・・」
健一が落ち込んでいるように見えたのか、杏子は、申し訳えなさそうに謝った。
―――こういう優しいところは、昔と変わってないな。
「謝るなよ!余計に惨めになる!謝るくらいなら、惚れてくれ!」
「そんなん無理!」
「はぁ?こんなにいい男いてないぞ?」
「私には、ガッくんがいてるもん」
「そもそも、ガッくんは俺やし!」
「ぜーんぜん、違うもん!」
「はぁ?どこがどう違うねん!」
健一たちは、答えが出ない言い合いをしていた。
「まぁ、まぁ、お二人さん。仲良くね。今度は、俺らが二人をくっつけてやる!」
「聡くん、それいいね!」
お互いの気持ちが通じ合った二人は余裕が出てきたようだ。
「猿渡先輩、頼みます!」
「ち、ちょっと勝手に決めんといてよ!」
猿渡の悪巧みに、杉村と健一が乗ったので、杏子は慌てていた。
「ははは・・・まぁ、のんびりいけば?二人とも素直にな」
そう言うと、猿渡たちは健一たちの前を後にした。
「素直にって・・・よく言うよな」
「そうやね」
素直になった二人の姿を見ている二人の距離は少し縮まっていた。