「俺さ・・・あの時ショックでさ・・・」
「あの時?」
猿渡が何を言いたいのか分からいのか、杉村は首を傾げて聞いていた。
「恵が俺の知らない男と仲良く歩いていた時・・・」
「あれは・・・聡くんが・・・色んな女の子と遊んでたから・・・」
杉村の言葉に、少し笑みを零していた。
「いや、その前かな・・・木下じゃない男やで」
猿渡が杉村に送る視線は、本当に柔らかくて、見ている二人の方が恥ずかしくなっていた。
「えっ?」
杉村は目を丸くして、猿渡の言葉を待っていた。
「恵は覚えてないんかな・・・。俺さ、いつも俺の側にいた恵が他の男といるのが許せなくてさ・・・
でも、恵が楽しそうにしてるのを邪魔して、嫌われるのが嫌やったから、言われへんかった」
視線を太陽の熱で熱くなっている地面に向けて、ボソリと話した。
「聡くん・・・」
「それでさ、何もかもどうでもよくなって、色んな女と遊んだ・・・」
「・・・聡くん。私・・・」
杉村は今にも泣き出しそうな顔をして、必死に自分の想いを話そうとするが、どうしても言葉が出てこないようだった。
「・・・そんな俺を見て、あんなことしたんやろ?」
「私ね・・・聡くんに構って欲しくって・・・」
「ごめんな。気付かないで・・・」
「ううん。私が悪いんやから・・・」
素直になった二人の姿は、きっと小さい頃のままなんだ、きっと。
「恵・・・俺、お前のことがずっと好きやった」
猿渡が言い終えた瞬間、杉村の目から我慢していた涙が零れて、熱い熱い地面へと消えてしまった。
「私も・・・」
どちらともなく、近づき、今までの距離を埋めるように抱き合った。