「じゃあ、俺の彼女になったらいいやん!」


健一自身、とんでもないことを言っているのがわかっていた。

でも、もう後戻りできなかった。

健一の言葉に杏子は再び足を止めた。

そして、さらに続けた。


「彼女がいたら、俺に付き纏う女もいなくなるやろうし」


健一は、立ち止まる杏子に近づいた。

杏子の隣に並んだ瞬間、健一を睨みつけ思いきり頬をビンタした。


「痛っ!」


「女なら誰でも、ついてくるって思ってたら大間違いやで!あんたなんか大嫌い!」


叩かれた頬を押さえる健一を一喝すると、走ってその場を立ち去った。

健一は、その後ろ姿を見ながらため息をついた。


「はぁ・・・・・・またやってしまった。なんでこうなるんや」


健一は、自分自身の言動に苛立っていた。


「どうして、あいつの前では冷静でいれないんや・・・」


と静かに呟き再び大きなため息をついた。


しばらく、立ち止まっていると、後ろから来た生徒が健一の顔を覗き込み、ヒソヒソと話をしながら通り過ぎていくのを見て、我に返り歩き始めた。