「ちょと、もっと小さくならな、ばれるで!」


「そんなこと言ってもさ・・・」


二人は中庭の植え込みに隠れて、猿渡と杉村に近づいていた。


「恵・・・こんなところに連れてきてごめん」


ぼそぼそと話す猿渡の声は、二人には聞き取りにくかった。


「聡くん・・・どうしたん?」


不安ごな顔つきで目の前にいる猿渡を杉村は見つめていた。その視線は、愛する人を見つめる優しいものだった。


「こうやって恵と話すの久しぶりやな」


少し上を見ながら、猿渡は笑みを零す。


「そうやね・・・」


「・・・・・・」


杉村も懐かしむように声に出したが、猿渡からの返事がないので続けた。


「聡くん・・・彼女とはうまくいってるん?」


杉村が言葉を詰まらせながら言った。おそらく、聞きたくなかったのだろう。
「彼女?いてないし」


「うそ!噂になってるで!」


そう冷静に答える猿渡の言葉が信じることができなかったのだろう。

杉村が声を荒立てた。


「ただの噂やろ?」


杉村が声を荒立てても、猿渡は慌てる素振りを見せなかった。


おそらく、杉村の行動の一つ一つが猿渡にとっては予想の範疇だったのだろう。


その猿渡の余裕ぶりに、杉村はイライラしているようだった。



「だったら・・・」


「俺には彼女はいてないよ」


「そうなんや・・・」


俯く杉村に猿渡は、ゆっくりと話し始めた。


梅雨の晴れ間の太陽は、もう真夏のように二人を照り付けていた。