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「ちょっと、そんなにくっつかんといてよ!」


「こうでもしないとラブラブぶりが出ないやろ?」


―――ラブラブぶりって・・・。


杏子と健一は、ただいま作戦を実行中。

この数日間、健一はは猿渡の昼休みの行動を観察していた。

そして、いつも同じような時間にこの人気のない中庭横の廊下を通っていることがわかった。


「おっ、前からターゲット登場」


声をひそめながらも、健一は嬉しそうに杏子に伝える。二人は、軽く息を吐き、気合いを入れた。


「猿渡先輩、こんにちは」


わざとらしく言う健一は、憎らしいくらい爽やかだった。


「お前ら・・・」


目の前の猿渡は目を真ん丸にして、二人の顔を往復させていた。


「先輩が杏子にアルバムを見せてくれるようにしてくれたので、うまくいきました。ありがとうございました。


―――うわっ、さりげなく『杏子』とか言ってるし。


「先輩も杉村さんとうまくいけばいいですね」


なるべくさりげない笑顔を作り、猿渡に言うと、再び驚いた顔をしていた。


「恵は・・・」


「杉村さんは、きっと猿渡先輩のことが好きなんだと思いますよ」


健一は、猿渡の言葉を遮るようにして、続けた。


「・・・・・・」


「じゃあ、杏子、行こう」


「うん」


目を合わせて、できるだけ本当の恋人に見えるように、演じた。


猿渡は、二人の様子を疑うことなく見ていた。