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「あんな作戦でうまくいくんかな?」
杏子は、自分の部屋の天井を見つめながら、呟いた。
「杏子、ご飯やで!」
1階からの雅子の声に杏子は大きな声で返事をした。
「はぁい」
パタパタと階段を降りると、夕飯のいい匂いが空腹を刺激する。
「あ〜お腹空いた〜」
「今日はカレーにしたの」
ニッコリと笑う雅子の姿に杏子は元気をもらった。
「ただいま」
父親の晃も帰って来て、家族水入らずの夕食となった。
「あっ、お母さん。ガッくんって覚えてる?」
「懐かしいね。杏子を守ってくれた男の子でしょ?」
「そうそう。そのガッくんが一緒のクラスやねん!」
嬉しそうに話す杏子の姿に雅子は微笑み、晃は複雑な顔をしていた。
「転校でもしてきたん?」
「いや・・・初めから一緒のクラスやったけど、変わりすぎて、気付かんかった・・・」
俯いて話す杏子に雅子が続けた。
「あんた、好きな子を気付いてあげられへんかったん?」
「ち、ちょっと!お母さん!私は・・・」
慌てふためいた杏子は動揺を隠せずにいた。
そしてそんな杏子の姿を見て晃は、さらに不機嫌になった。
「杏子、あんたね・・・毎日毎日、ガッくんの話ばっかりしてたら、お母さんだって気付くわよ」
「・・・・・・」
「でもよかった。最近、あんた元気なかったから・・・今日は元気みたいやし・・・またガッくんに助けてもらったん?」
「・・・助けてもらったんかもね」
そう笑顔で言う杏子に雅子は安心したような面持ちになっていた。それに反して、晃は少し寂しそういしていた。