「・・・あの二人、幼なじみみたいやで」


「マジで?」


「うん。同じ中学出身の子から聞いたんよ」


「だからか・・・自分の気持ちより相手の幸せを願ってる・・・兄妹みたいな関係・・・」


―――兄妹みたいな関係かぁ・・・。そういえば・・・。


さらに沙知たちから聞いた話を思い出した。


「杉村さんが猿渡先輩に構ってほしくて、学年で一番目立つ子を手に入れようと、彼女から奪おうと、色仕掛けまでしたって・・・」


「マジで?あいつ相当、歪んでない?」


「まぁ、噂の段階やけど・・・でも色仕掛けで奪おうとしたのは事実」


「女って怖い」


「女ってひとくくりにせんといてよ」


杏子は、隣を歩く健一をキリッと睨んだ。


「俺にとっては、お前は脅威やで?嫌われたくないからな・・・」


「素性がばれたら、まずいくらい酷いん?」


真剣な顔をして見つめる健一から逃げるように、杏子は茶化した。



「ち、違うし」


「怪しいなぁ」


「俺のことより猿渡たちの話。もし、俺の仮説と、お前の話が事実なら・・・あいつら両想いやん」


「そうやね」


―――一体何を企んでるん?


含み笑顔をしている健一の次の言葉を待った。


「あいつらがくっつかなかったら、またお前みたいな被害者が増えるんじゃないか?」


「・・・あんたを捨てたから、次を狙うかもね」


「俺って捨てられたん?」



少し引き気味に健一が尋ねた。


「そうやで。私言われたもん。あんたにくれてやるって」


「・・・人を物みたいに・・・・・・それでもらってくれたん?」


―――『もらってくれたん?』って・・・そんな聞き方・・・しかもそんな切なそうな表情で言われても・・・。


「・・・宅急便で指定日配達にしておいた」


杏子はこう返すのが精一杯だった。


「ちなみにいつのお届けですか?」


―――えっ?そんなこと聞く?


「個人情報なんでちょっと・・・」


「お前な・・・まぁ、いい。楽しみにしてるから」


―――楽しみにしてるから・・・って。


「・・・でもさ、被害者が増えないようにするには・・・もしかして?」


「そう!あの二人をくっつける!」


―――そんなに簡単に言ってるけどさ・・・。


「で、どうするん?」


「それはやな・・・」


健一は、杏子に耳打ちするように言った。