「なぁ、猿渡って知ってる?」


放課後、いつものように健一と一緒に帰ってる時に、口にした名前に杏子は驚いた。


「えっ?うちの学校の先輩の?」


健一から猿渡の名前が聞かれるとは思っていなくて、動揺していた。


―――なんでその名前を・・・あんたを苦しめてる張本人やで?それを知ってるん?


「そう、猿渡聡太」

―――ちょっと待って、なんで知ってるん?知り合い?


「その人がどうしたん?」


杏子は、動揺を隠しながら、聞いた。


「俺さ、あいつに脅されたんや」


「お、脅された?」


―――脅された?


「くくく、お前ほんま面白いな。昔より表情が豊かになってるし」


「笑ってる場合じゃないやん!脅されたってどういうこと?」


「昔の写真をばらまかれたくなかったら、杉村と付き合えってわけわからんことを言われた」


「はぁ??杉村さん?なんでそこに出てくるん?」


―――意味わからんし・・・。


どこまでも杉村さんが絡んでくる現状に、杏子は腹が立っていた。


「俺が思うにさ、あいつ・・・猿渡は、杉村が好きなんじゃないかな?って・・・」


「それならなんで、あんたと付き合えって言うん?」


―――意味がわからん。好きな女の子を他の人と付き合わすなんて、意味不明やし・・・。


「・・・仮説やけど・・・あいつは杉村が好きなんやけど、杉村が狙ってる相手に見向きもされていかいのが不憫に思えて・・・。

杉村のことを『恵』って呼んでたし・・・ただならぬ関係なんじゃないかな?って思うんや・・・」


―――ただならぬ関係・・・。


杏子は、沙知たちから聞いた話を思い出した。