杏子は、家に帰るとすぐにベッドに寝転がり、自分の元に返って来たハンカチを握りしめ、今日起きた事を思い返していた。
―――なんか、充実した一日・・・というより、内容が濃い一日やったなぁ・・・。
朝、出掛けるときは、このハンカチの持ち主がわからんかったのになぁ・・・。
あっという間に謎が解けたなぁ・・・。
まさか、あいつがガッくんだとはな・・・変わりすぎやろ!
もし免許証とかパスポートとかあったら絶対に自分のやとは思ってもらわれへんで!
明日からもあんな噂が付きまとうんやろうか・・・?
事実じゃなくても、あんなこと言われたら・・・嫌やんな・・・どうにかしてあげたいな・・・。
杏子は、自分をずっと守ってくれていた健一に、少しでも恩返しがしたいと思っていた。
―――でもどうやって・・・。
ゆっくりと目を閉じて浮かんで来たのは・・・真ん丸と太り、目を細くして笑う少年の顔。
―――あんな風な笑顔に戻れる日が来るんかな・・・?私が・・・してあげれるんかな?
昔のガッくんに戻してあげれるんかな・・・?
『それまでに惚れてくれよな?』
―――あぁ・・・あんなきれいな顔で言われたら・・・・・・。
不意に思い出した健一の言葉にドキドキと高鳴る胸の音と格闘し始めるのだった。
―――半年かぁ・・・。
どうなるんやろう・・・私。
言えるんかな・・・?
すでに惚れる前提やし!
まだどうなるかわからんし・・・ねぇ?
杏子は、すでに片足を健一は にどっぷり浸かってるのを自覚しながらも、まだ強がっていた。