「はい、聞かせてもらおうじゃないの!」
授業が終わって4人は、駅前のファストフード店に入った。
「ガッくんってのは・・・小学校の時のあだ名で・・・
岩谷の岩を『ガン』って読んで、始めは『ガンくん』やったんやけど、
呼びにくいから、『ガッくん』になったの・・・」
杏子が説明をしている間、美穂の目は輝いていて、「次は?次は?」と催促していた。
「ふふふ・・・小学生っぽいね。じゃあ、ガッくんは杏子のことをなんて呼んでたん?」
「その呼び方やめろって」
健一が不機嫌そうに言うのにも、美穂は負けてなかった。
「あれ?杏子にだけしか呼ばせたくないん?」
調子に乗る美穂に、健一は睨みをきかせた。
「冗談やって。それで、なんて呼んでたん?」
美穂の催促に健一は、黙って俯いてしまった。
「健一?お前、顔真っ赤やぞ?そんなに恥ずかしい呼び方なんか?・・・杏子たんとか?」
佳祐は、この状況を面白がってる。
「違うし・・・」
健一が否定をするも、弱々しい。
「それなら白状しろよ」
健一は、隣に座っている杏子を横目で見ていたが、杏子は平然とした顔でポテトを食べていた。
「・・・・・・杏子ちゃん」
蚊が鳴くような声で発した言葉を聞き入れた美穂たちは、健一とのギャップに笑いを堪えることができないようだった。
「くくくっ・・・お腹痛いよ」
「はははっ・・・健一が『杏子ちゃん』って笑えるし!」
いつまでも笑い続ける二人に健一も怒り「もう何も話さんぞ!」と駄々をこねるように言った。
「あっ健一ごめんよ・・・もう笑わんから」
「眞中くん、許して」
二人揃って顔の前で掌を合わせて健一に謝る姿を見て、健一と杏子は顔を見合わせて笑った。
「それで二人の今の関係は?」
ようやく笑い終えた美穂が、真剣な顔をして、二人に聞いた。