「なぁ、黒谷のこと好きなん?」


杏子は、健一の質問に立ち止まり、振り返ると「はぁ??」と顔を眉間に皺を寄せて言った。


健一は、まずいと思ったが、引くことはできなかった。


「だから、黒谷が好きなんか?って聞いてるんやん」


「なんでいきなりそんな話になるん?」


杏子は、ため息を一つ吐き、再び歩き出した。


「だって・・・昨日、楽しそうに帰ってたから・・・」


「はぁ?あんたに関係ないし」


―――そう、関係ないよ。でもな、気になるんや。


「・・・好きなんやな?」


健一の問いかけに杏子は足を止め強く言い放った。


「好きじゃないし!」


杏子の言葉に、健一は顔を上げると、杏子の険しい顔が目に入った。


「なんで、こんなことあんたに言わなあかんの?私はあんたの彼女じゃないんやから!!」


そう言うと、杏子は健一に背を向けて、歩き出した。


―――確かにそうや。俺はお前の彼氏じゃないから、お前が黒谷と仲良くしようと関係ない・・・関係ないけど。