『デブはデブでも、ガッくんは違うよな』
『杏子ちゃんをこんなに笑う子にしてくれたのは、ガッくんやんな』
『上級生に立ち向かえるのもガッくんだけやし』
『あれで痩せてくれたら、完璧やのにね』
「こんなこと言ってたんやで」
杏子は、健一の顔を見ると、ニッコリと笑ってみせた。
「・・・・・・」
「私、みんながそう言ってくれるのが嬉しくて・・・でもガッくんは、急に話をしてくれなくなって・・・」
杏子は、あの時のことを思い出すだけで、辛くなってきていた。
―――きっと今の私、酷い顔になってる。
「・・・・・・」
「しかも好きな女の子のタイプが『背の高い子』って・・・私なんて絶対無理って知って・・・」
杏子は、声を詰まらせながら話し、涙を堪えるようにグッと手に力を入れていた。
「た、助けてくれたのも・・・同情なんやとか、好きな子にかっこつけるためやとか思ったり・・・・・・」
涙がこみ上げてくるのを我慢できなくなり、よりいっそう俯いた瞬間、健一が杏子を包み込んだ。
「ごめん。あれさ嘘なんや」
「嘘?」
杏子は、顔を上げて真相を求めた。
「『好きなタイプの女の子』・・・俺は背の低くて笑顔がかわいい女の子が好きだった」
杏子から視線を外す健一の顔は、真っ赤になっていた。
その顔は、その女の子が誰なのかを表していた。