「あっ、予鈴」
無情に鳴り響くチャイムに健一が反応した。
しかし、お互いにその場から動こうとはしなかった。
「俺さあの時、めちゃくちゃショックやったんやからな」
「えっ?」
「お前らさ、掃除中にどんな男が好きとかいう話をしてたやろ?」
「・・・してたかな?」
―――あんまり覚えてないし・・・。
「その時、『デブは嫌』とか『暑苦しい』とか『ありえない』とか言ってたやろ?」
「あっ」
「やっと思い出したか?あれ、俺聞いてしまったんや」
―――あの話、聞いてたんや。そりゃショックやんな・・・でも続きがあるから・・・って聞いてない?
「その話、どこまで聞いたん?」
杏子は慌てて、健一に聞いた。
「・・・俺さ、もう耐えれなくなって、途中で立ち去ったん・・・・・・」
俯く健一は、思い出すのも辛そうだった。
―――やっぱり・・・誤解やで。
「それには続きがあるんやで」
「えっ?」
遠くを見ていた健一は、驚いた顔をし杏子の方を振り返った。