正門を出たところで、姿が見えたので静かに近づいた。
明らかに怒っているようで、ブツブツと文句を言いながら歩いていた。
「何、ブツブツ言いながら歩いてるん?」
杏子の横に並ぶと、キリッと鋭い視線を向けられて健一は何も言えなかった。
「あんたのせいやろ!」
―――やっぱり怒ってる。
「ごめんよ。悪かった。あぁでもしないと、うるさいから」
「モテる人は大変ですね」
「まぁね」
厭味で言われたのはわかっているが、健一は、こんな風にしか応えることができなかった。
そんな健一の様子に杏子はますます腹を立てているのがわかった。
―――なにやってるんだか、俺は。
健一は、何か打開策はないかと、髪をクシャっと乱すと杏子に話しかけた。
「なぁ、岡崎さん」
杏子に付いて歩いていたが、無視をされた。
若干ではあるが、杏子が歩くスピードも上がっているような気がした。
「なぁ、岡崎さ〜ん」
何度か呼びかけても、健一は存在しないのではないかと思うくらい、無視され続けた。
―――どうやったら、振り返ってくれるのか・・・。
健一の中では、杏子にどうやって話せるかばかりを考えていた。
なかなか話題が見つからなかったので、思いついたことよくを考えもせず口走ってしまった。