小学3年生のクラス替えの時に、健一と杏子は同じクラスになった。
杏子は、健一に比べると小さかった。
杏子はおとなしいというのもあり、上級生にいじめられたりしていた。
今となって考えたら、小学生が好きな子にちょっかいを出していただけかもしれない。
しかし、小学生には上級生からからかわれることがとてつもなく恐怖に思えた。
杏子の友達も上級生には刃向かえないので、助けることが出来なく、杏子からは日に日に笑顔が消えていった。
しかし、健一は上級生にも負けない体格をしていたので、杏子の前に立ち、守った。
『ガッくん・・・ありがとう』
首が痛くなるんじゃないかというくらい、見上げて健一の顔を見て、『ありがとう』と言う彼女にドキドキした。
それから、彼女はいじめられることはなくなった。
しかし、まだ笑顔は見ることができなかった。
杏子の笑顔を見たい一心で、話し掛けた。面白い話を見つけては話す。
そんなことを毎日繰り返すうちに、1年くらい経った頃、声を出して笑うようになってくれた。
―――かわいい・・・。
笑うと出てくる口元のえくぼがかわいらしかった。
もっと笑顔が見たい。健一は、そう思うようになっていた。
隣の席になった時は、少し時間があったら、話をしていた。健一にとって至福の時だった。
しかし、ある出来事が健一を大きく変えてしまった。