「じゃあ、友達の佳祐に、『いいもの』を見せてやるよ」
そう言うと、隣の部屋に入り、あるものを佳祐の前に出した。
「はい」
健一がテーブルに置いたのは、小学校の卒業アルバムだった。
「何?」
「まぁ、いいから見て」
ソファーにもたれ、佳祐にアルバムを見るように勧めた。
佳祐は目の前のアルバムに手を伸ばし、パラパラとめくりはじめた。
静かな部屋に佳祐にはがアルバムをめくる音だけが聞こえる。
「なぁ、苗字は?」
「岩谷」
その後、「いわたに・・・いわたに」と呪文でも唱えるように佳祐は、俺を捜し始めた。
「見つかったか?昔の俺」
「これか?」
佳祐は半信半疑で写真の人物を差し、健一の表情を伺った。
「正解」
「えっ、まじでこれが健一?」
佳祐は、目の前の健一とアルバムの中の健一を見比べていた。
アルバムの中の健一は、丸々と太っていて、ものすごくいい顔をして笑っていた。
今のきれいな二重とは全く違って、笑ってるからか、脂肪のためか、目は細く線のようだった。
今の割と角張った顔とは考えられないくらい、真ん丸な顔は今にもはち切れそうなくらいだった。
「お前、俺がほんまに整形したとか思ったやろ?」
「いや・・・だってさ・・・違いすぎるやん!」
「俺だって変わったと思ってるよ」
「なんで・・・」
佳祐が、『なんでここまで変わったんや?』と聞こうとしているのがわかった。
「なんでやろうな・・・」
佳祐の言葉に便乗するように、健一はアルバムに目を落としながら言った。
佳祐もその視線を追い掛けるように再びアルバムを見ていた。
佳祐は、健一の視線の先にいた人物を見て、「えっ」と目を丸くして驚いていた。
「・・・というわけ」
それだけ言って、アルバムを片付けに隣の部屋に行った。
「びっくりした?」
「びっくりして、声も出なかった」
佳祐は、まだ頭の中が混乱しているらしく、驚きを隠せずにいた。
「俺もさ、諦めが悪いよな・・・」
目を閉じて、俯くと静かにつぶやいていた。
そして、瞼の裏に浮かんで来たのは、口元にえくぼを見せて笑う幼い杏子の姿だった。
―――俺は、あの時から・・・。