健一の実の父親は、ギャンブル好きでさらに母の美紀子に暴力をふるっていたので、いつも泣いていた。


でも、外ではそんな素振りを見せず、いつも笑顔でいた。


そのことが健一を余計に苦しめていた。

なんとか小六の時に離婚し、母の実家に住むことになった。


美紀子は、兄弟の学費を稼ぐために一生懸命働いた。


祖父母も父親のことは良く思っていなかったので、健一と美紀子が戻ってきたことを喜んでいた。

そして、中ニの冬に健一は、今の父親を紹介された。

美紀子よりも一歳年上の彼は、憎らしい父親は真逆の男だった。


この人なら、母を幸せにしてくれると思い、「母をよろしくおねがいします」と頭を下げた。


そして、二人は結婚し、三人で暮らしていたが、彼のアメリカ転勤によって、俺だけが日本に残ることにしたんだ。


二人共、一緒にいくことを勧めてくれたが、なんせ英語が苦手だから、行くのが嫌だったので日本に残った。


―――この話は・・・佳祐には、そのうち話すことにしよう。


「なぁ・・・佳祐はあの噂どう思う?」


健一は、ポテトをつまみながら、佳祐に目線だけ向け聞いた。


おそらく、佳祐も健一がこの話をするために家に呼んだのだと気づいていた。


「俺は信じてないよ。もし事実だとしても、健一との関係は今と変えるつもりはないし」


『何言ってんのお前』とでも言い出しそうな言い方で、佳祐が言ってくれたことに安心した。


「佳祐・・・ありがとう」


「何、言ってるねん!俺ら友達やろ?」


「お前、いい奴やな!」


「今頃気付いた?」


「うん」


「ひどいなぁ!」


二人して心の底から笑い合った。


そして、お互いに今まであった二人の見えない壁も崩されたように感じていた。