階段を上り、部屋の鍵を開ける健一の隣で佳祐は5階から見える景色を眺めていた。


「佳祐、何ボーッとしてんのや?早く入れ」


「あぁ・・・」


部屋は、家族が住むには少し狭い。

必要以上の物は置いていない。

だから、散らかってもいない。端的に言うと、生活館がない。


部屋を見渡す佳祐の中にも、おそらく疑問が浮かんでいた。


「健一、もしかして・・・一人暮らし?」


「あぁ、よくわかったな。その通りやで。両親は、親父の仕事の都合でアメリカにいるからな」


リビングでソファーには座らず、テーブルの前に胡座をかき、買ってきたハンバーガーを袋から出していた。


「まじで!?アメリカ!すごいな!」


「まっ、実の親父じゃないけどな」


「・・・・・・」


実の親父じゃないと言ったことが、佳祐には衝撃的で言葉を失っていた。


「まぁ、座れ」


健一は何も言わない佳祐に笑いかけ、自分の向かいに座るように指差した。


「俺の両親は、俺が小六の時に離婚して、俺は母親について来た。

『眞中』は、母方の姓なんや・・・。それで、去年母親が再婚したんや。

兄貴もいてるんやけど、7歳離れてるから、親が離婚したのと同時に東京の大学へ行ったから、一人暮らししてる。

だから、俺はここで一人暮らしってわけ」


「そうやったんや・・・」


佳祐は、いつものような雰囲気ではなく、健一にこんな話をさせてしまったことを申し訳なく思っているのか、言葉数が少なかった。


「新しい親父とは、仲もいいので、ご心配なく!ただ単に英語が苦手やから、なんだかんだ理由をつけて、行かんかっただけやし」


そう言うと健一はハンバーガーを頬張った。