「けーすけ、今日は委員会あるから、先に帰っておいて〜」


放課後、教室の端からみんなに聞こえる大きな声で美穂は、佳祐に声を掛けていた。


「相変わらず、元気やな。お前の彼女」


「まぁな。惚れんなよ」


「友達の女を奪う趣味はないよ」


健一は、笑いながら言った。


「岡崎ちゃんなら奪ってたやろ?」


「・・・・・・」


―――こいつ、絶対、しめてやる!!


「帰るぞ」


佳祐を睨み、何も答えないで、立ち上がり教室を出ようとしていた。


「健一、待てよ!」


昼休みと同じく、健一の周りからは人が避けるようにしていなくなっていた。


いつもと変わらないのは、佳祐と美穂くらいだった。


「なぁ、佳祐、うちに来るか?いいもの見せてやる」


健一は、佳祐に全てを話そうと決めた。


「えっ?」


健一が言った『いいもの』の中身を想像している佳祐の頭の中は、ピンク色だった。


「佳祐の頭の中が読めそうで怖いよ・・・」


健一のあきれ顔を見て、佳祐は慌てて出した。


「いや、健一も観るんかな?ってな」


「『健一も』ねぇ・・・」


―――弁解するつもりが、墓穴掘ってるよな、こいつ。


「いや、ねぇははは」


――別に、そういう本やDVDを見てもおかしくはないと思うが、こいつが気にしてるのは・・・。


「江坂さんに言おうかな〜」


「健一!それだけは勘弁」


佳祐は手を前であわせ拝むように、懇願した。そう、美穂にばれることを恐れていた。


「じゃあ、なんかおごれ!」


「は、はい。わかりました」


弱みを握った者は強かった。


「よろしい」


そして佳祐に地元の駅前でハンバーガー、ポテト、ジュースまで買わせ、健一の家に向かった。


「そんなに江坂にばれるのが嫌なんか?」


「・・・女の子って、あぁいうの嫌がりそうやん」


美穂だったら、笑って許してくれるのではないかと健一は思ったが、当人はそんなわけにはいかないらしい。


「まぁな。でも男なら少なからず持ってるんじゃねぇの?」


―――そう、俺だって持ってるし。


「そうやんな・・・って健一も?」


「着いたぞ〜」


話を逸らすように健一は自分の家を指差した。


佳祐を家に連れてくるのは、これが初めてだったので、「へ~、健一、こういうところに住んでたんだな」とマンションを見上げていた。