16
「杏子、知り合いからケーキバイキングの割引券をもらって、明日行くつもりなんやけど、一緒にどう?

一人、行けなくなって、割引券が余ってるんよ」


「えっ?行きたい!」


甘いものに目がない杏子は、沙知の言葉に飛びついた。


「もう一人の友達は私の中学の時からの友達で、理香っていうんやけど・・・」


「あっ、あのきれいな子やんな!」


沙知は学年でも目立った存在で、一緒にいる友達もきれいな子が多い。


そんな子と友達になれるかもしれないというだけで、嬉しかった。


「そうそう。きれいやけど、喋るとおもしろいよ」


「そうなんやぁ」


―――華代ちゃんみたいやな・・・。


「じゃあ、明日の11時に駅に集合!」


「了解!」



―――甘いものを食べて、忘れよう・・・なんかもやもやしてることを全部忘れよう・・・。




杏子の中の健一へのぼんやりとした想いは、これ以上、色付くことはなかった。