7
*****
準決勝第1試合目
5組対8組
佳祐から、二人の勝負のことをを聞いた杏子は、緊張しながら試合を見守った。
杏子がグランドにいる健一と黒谷に目をやると、遠目でもわかるくらい睨み合っていた。
「杏子、どうしたの?怖い顔して」
杏子の変化に気づいた美穂が聞いてきた。
そして、さっき佳祐から聞いた話を美穂に話した。
「えーっ!勝負?!」
美穂の声は相当大きかったが、選手の登場で沸き返っている観客の中では、全く目立たなかった。
「・・・・・」
「もしかして、杏子を賭けた戦い?」
「そ、そんな大袈裟なもんじゃないよ・・・」
美穂の言葉に恥ずかしくなり俯いた。
「それで、どっちを応援するん?」
―――えっ?どっちを応援?
杏子の頭の中では健一と黒谷が睨み合っていた。
「あー!あかんっ!」
美穂の声で我に帰った杏子は、目の前の光景を観て何が起きたのかが把握できた。
前半3分
相手の隙をついて、黒谷がシュートを決めた。
美穂はあからさまに健一を応援していた。
佳祐は相手チームからボールを奪っては、健一にパスするようにしていた。
それに応えようと必死に相手チームを交わす。
杏子は手をギュッと握りしめて、健一の姿を目で追う。
そして前半25分
佳祐からボールを受けた健一がドリブルで相手チームを交わし、そのままシュート、ゴール!待望の1点に観客も総立ちで喜ぶ。
「キャー!眞中くんかっこいい!」
健一への歓声が一段と大きくなる。当の本人はいたって冷静な表情で走っていた。
「杏子!眞中くんが決めた!やった!」
美穂は飛び上がり、興奮して杏子の肩を掴み、乱暴に揺すった。
前半はそのまま折り返した。