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準決勝第1試合目


5組対8組


佳祐から、二人の勝負のことをを聞いた杏子は、緊張しながら試合を見守った。

杏子がグランドにいる健一と黒谷に目をやると、遠目でもわかるくらい睨み合っていた。


「杏子、どうしたの?怖い顔して」


杏子の変化に気づいた美穂が聞いてきた。

そして、さっき佳祐から聞いた話を美穂に話した。


「えーっ!勝負?!」


美穂の声は相当大きかったが、選手の登場で沸き返っている観客の中では、全く目立たなかった。


「・・・・・」


「もしかして、杏子を賭けた戦い?」


「そ、そんな大袈裟なもんじゃないよ・・・」


美穂の言葉に恥ずかしくなり俯いた。


「それで、どっちを応援するん?」


―――えっ?どっちを応援?


杏子の頭の中では健一と黒谷が睨み合っていた。


「あー!あかんっ!」


美穂の声で我に帰った杏子は、目の前の光景を観て何が起きたのかが把握できた。



前半3分


相手の隙をついて、黒谷がシュートを決めた。


美穂はあからさまに健一を応援していた。


佳祐は相手チームからボールを奪っては、健一にパスするようにしていた。

それに応えようと必死に相手チームを交わす。


杏子は手をギュッと握りしめて、健一の姿を目で追う。



そして前半25分


佳祐からボールを受けた健一がドリブルで相手チームを交わし、そのままシュート、ゴール!待望の1点に観客も総立ちで喜ぶ。


「キャー!眞中くんかっこいい!」


健一への歓声が一段と大きくなる。当の本人はいたって冷静な表情で走っていた。


「杏子!眞中くんが決めた!やった!」


美穂は飛び上がり、興奮して杏子の肩を掴み、乱暴に揺すった。


前半はそのまま折り返した。