そして、運命の試合が始まった。5組の相手は、現役のサッカー部が3人含まれている優勝候補。
黒谷と佳祐が元サッカー部といっても、やはり圧倒的に不利である。
点を入れることだけでも難しいと予想された。
しかし、健一と黒谷の気合いは、中途半端なものではなかった。
前半2分 いきなり黒谷がゴールを決めた。
1組の現役サッカー部員も気を抜いていたから取ることができた1点だった。
グランド中が予想外の展開にグランド内がどよめきたった。
黒谷は少し離れた健一に、『なめんなよ』とでも言いたげな視線を送った。
―――始まったばかりやし・・・まだまだこれからや!!
健一は、再び気合いを入れてボールに食らいついた。
黒谷の1点に相手チームも本気となり、5組のゴールを割ろうと必死で攻撃して来た。
しかし、どんなパスやゴール健一か黒谷、そして佳祐に奪われていた。
健一たちがボールを奪うことができても、相手も本気、簡単にゴールはさせてもらえない。前半は『1-0』で折り返した。
―――このままやったら、いつ1組に点を入れらるかわからん・・・そしたら、俺も負けてしまう。
健一は、肩で息をしながら、グランドの反対側に立っている杏子の姿を見つけた。
―――俺は、お前を守るって決めたんや!
健一には黒谷以外は見えていなかった。
後半開始直後から1組が攻め込んできた。
佳祐は走り回り、あらゆるところに顔を出しては、健一のチャンスを伺った。
相手チームも自分たちのプライドがあるので、攻撃の手を緩めることはないが、なかなか得点には繋がらない。
後半5分 コーナーキックから佳祐が得点。再び、観客のテンションが上がる。
「やったー!佳祐!」
美穂と杏子が佳祐のゴールを喜んでいた。後がない1組が猛反撃を開始した。
サッカー部の高木や大竹という主力選手がシュートを次々と放つが入らない。
その度に観客からは、残念そうな声と、安心したような声が混じり合う。
健一と黒谷も再三ゴールを狙うも、シュートが決まらない。
このまま終わるかとも思った後半18分。コーナーキックから1組の高木が意地のゴールを決めた。
『2-1』
さらに両チームの攻防は続き、攻守は何度も入れ替わり、その度にそれぞれのゴール前が脅かされた。
しかし、両チーム共に得点は入らずに試合終了。
『2-1』
5組が優勝候補の1組を破り、準決勝進出が決定した。
―――勝った・・・。
試合後、健一は佳祐の元に駆け寄り、「すまん。ありがとう」と頭を下げた。
「気にするな。それより、俺、美穂の試合を観てくるから」
「あぁ」
佳祐は、体育館へ向かい、健一は中西に頼まれていた体育委員の仕事をしに行った。