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健一が杏子の方に目をやると、不安そうに健一の方を見ていた。
―――なんでそんな不安そうな顔をしてるんや?やっぱり、黒谷には渡されへん!
あいつを守るのが俺とは違う奴だとしても・・・黒谷だけには任せることはできへん!!
健一は、ある挑戦状を黒谷に突き付けようとしていた。
グランドでは男子のサッカーの1試合目が始まろうとしていた。
1組〜8組までのトーナメント戦。
グランドに出ると、黒谷の元へと一直線に歩いて行った。
黒谷も健一が近づいて来るのに気づき、近づいて来た。
ぶつかる視線は、どんな固いものでも切れてしまいそうなくらい鋭かった。
「なぁ、黒谷。俺と勝負しないか?」
二人の睨み合いは、さらに白熱していた。
「どういう内容?」
落ち着いた様子で黒谷は聞き返してきた。
「今日の試合でどっちが多くゴールを決められるか」
「俺が元サッカー部ってわかって言ってるんか?」
「もちろん」
「負けたら、岡崎さんを諦めるってことやな?」
黒谷は少し笑みを浮かべて、健一に聞き返してきた。
「話が早いな」
「わかった。その挑戦、受けるよ」
そう言うと黒谷は背を向けてグランドの中心へ向かい歩いて行った。
「健一、俺は、お前の味方やからな」
健一が振り返ると、佳祐が、『全部知ってるよ』というような顔で立っていた。
「俺、やっぱり・・・黒谷だけにはあいつを譲られへん」
「あぁ。わかってる」
健一は、佳祐に昨日のことを話した。
黒谷は、杉村に教えてもらって保健室に来たと推測した。
二人で、黒谷の背中を睨み付け、これからの勝負への気合いを入れた。