授業も終わり、美穂は杏子と帰ろうと準備していた。
佳祐が、健一から聞いた話をメールしてくれたので、状況ほ把握していた。
―――私・・・眞中くんに昨日言ったこと、ちゃんと謝らないと。
そう思いながら、目の前を歩いている佳祐たちとの距離を一定に保つように、杏子と廊下を歩いていた。
―――杏子・・・あんたあんなにも愛されて幸せやで。
美穂は、きっと今の状態を打開する方法があると信じていた。
「ねぇ、杏子。今日はうちに遊びに来ない?」
「いいの?」
―――私の使命は、杏子を無事に家に送り届けること!今日はお兄ちゃんが家にいるから、帰りは車で送ってもらえばいい。
明日からのことは・・・また考える。
美穂は、今日の計画を頭に描きながら、廊下を歩いていた。
隣にいる杏子は、いつもの様子と変わりはなかった。
いつもと同じように他の友達に「バイバイ」と手を振って階段を降りようとしていた。
美穂たちの数段下には佳祐と健一がいた。
このいつもと同じ状況が、一瞬のうちに一変した。
突如、杏子が「えっ?」と声を上げたかと思ったら、階段を踏み外して下へと落ちていった。
近くにいた人間は、状況を把握できず、恐怖におののいた。
「キャー!」
佳祐たちも、階段の上からの悲鳴を聞いて振り返ると、目を丸くしていた。
杏子は、声も出すことなく下へと落ちていく。
まるでスローモーションのようにゆっくりと時間が進んでいるように感じるのに、美穂は動くことができなかった。
このままだと、杏子が・・・私は、目を閉じ悲鳴をあげることしかできなかった。