サンゴやクリスタルが飾られた美しい中庭にロイズが戻って来ると、フレアの黄緑色の瞳と、ユラの水色の瞳が出迎えてくれた。


「お待たせしました…ユラもいるので、今日は音楽鑑賞の日にしましょう…リクエストありますか?」

ロイズは白い柱に囲まれた、あずま屋の丸いテーブル席に着くと二人にたずねた。

「やった〜!ぼく、たいようの、ひとみの少女がいいな〜」

ユラが手を上げてリクエストした。

「OK…じゃあ、フレア様は?」

「はるの、うみかな〜」

「分かりました…」

ロイズは、ケースから出したセーユを膝の上に置くと、左手で柄を軽く握り、弓をかまえた。


セーユと呼ばれるこの楽器は、全長60センチほどの弦楽器で、楕円型をした共鳴部と柄からなり…本体と弓はクリスタルで作られ、演奏はかなり生まれつきの才能を必要とする楽器で、奏者の数は少なく、貴重な存在とされていた。


ロイズが弓をゆっくり弦にすべらせると、海の中にえもいわれぬ美しい音色が、響きはじめた…

クリスタルに共鳴した澄んだセーユの音色が海の中に広がっていく…