今日の空にぃの授業は、グループディスカッションだ。
各グループで議題を考え、それについて議論するらしい。
私のグループの議題は『もし、咲宮心愛が白坂先生のことをお兄ちゃんと呼んだら。』らしい。
全くもってどうかしている。
これを認めた空にぃもおかしいと思う。
「だから、お願い!咲宮さん!お兄ちゃんって言って!」
「絶対にイヤ!」
もちろん、断る。
「なんで?」
理由は、一つしかない。
バカだと思われるかもしれないが、そう呼ぶと好きって言い辛くなると思うからだ。
当然、そんなことは言わない。
「なんとなく。」
そう答えて、会話を終わらせる。
そこへやってくる笑顔の悪魔。
「何やってんだ?」
「あ、先生!咲宮さんが言ってくれないんです。」
「言わなきゃいけないことなの?」
私の呟きにグループ全員が頷いた。
「当たり前じゃん。咲宮さんが言わないで誰が言うの?」
「誰も言わなくていいんじゃ…」
私の抵抗はみんなに受け入れられなかった。
それどころか、クラスのみんなが注目しだして、更に言い辛くなった。
「ねえねえ、一回だけだから言ってみない?」
そんな言葉まで飛んできた。
「一回だけだからね。」
結局、私は言わなければならなくなった。
「おお!」
空にぃは何故か嬉しそうだし、なんかイラっとくる。
笑顔で催促してくるので、覚悟を決める。
「お、お兄ちゃん。」
私が言うとクラスは静まりかえった。
「な、なに?」
何が何だかわからない私はみんなに聞いた。
「可愛い…」
「は?」
今、なんて?
「咲宮さん!可愛い!」
「え、ええ!?」
「確かに今のは可愛かった。」
「空にぃまで?」
なんか失敗したかも。
そんなこんなで今日も私の日常は終わっていく。