あの悪夢のような練習は本当に実行された。
私は今まで銃を見たことも触ったこともなかったため、ずっと涙目。
からだも常に震えて、そのたびに船長からの怒声を浴びる。

その繰り返し。

女である私が銃を使うなど最初から無理なことであって、力がないせいで撃っては尻餅をついていた。

結局上達もするわけもなく、船長からは「センスねぇ。」の一言。
それでも練習は続いて、最終的には他の船員も恐怖の叫び声を上げていた。




「さ・・・最悪・・。」


「・・最悪なのは俺だって。」


「こんな気分が悪いのも久しぶりです。」


「これだったらマーシャルの方がまだ良かったのかもな。」

「そうですね。」



"マーシャル"とは船長が言っていた"アイツ"のこと。
この船の人たちは、人喰い鮫のことをマーシャルと呼んでいる。



- - -理由は知らないけど。



ごろり。

3人で甲板に寝転んだ。

空には満天の星。
まるでジュエリーボックスを空に散りばめたみたいに、綺麗に輝いていた。



「・・星は綺麗ですね。宝石みたい。」


「うわっ。ティムって結構ロマンを追い掛ける少年だったんだな!」


「えっ、イケないことなの?」


「そんなことはありませんよ。ロマンをわからない男など、女性に尻に退かれて終わる程度の男なのです。放っておきましょう、こんな馬鹿なやつなど。」


「ムカつくーー!でも今回は見逃してやるよ!もうティムの練習台にはされたくないから!」



二人は昼間の時よりも、小声で言い合いをしていた。
よほど私の銃の練習台は苦痛だったようだ。

もちろん私も当分御免だけど。





「っ痛。」


「大丈夫?ティム!」




突然両肩と両腕に激しい痛みが走る。
気が抜けたのか、今頃になって発砲したときの後遺症が来たようだ。

痛くて痛くてつい顔が歪んでしまう。



「大変だ。冷やさないと腫れ上がってしまいます。ティム、肩を出して。」


「え?!」


「そうだね、俺医務室から氷貰ってくるよ!」


「いっ、いい!大丈夫だから!!」


「何で?」




二人の疑問の雨が降り注ぐ。
私が今ここで肩を出したりしたら、女だと言うことがバレてしまう。
それだけは絶対に避けたい。

この海賊船で女だとバレたら、どうなるかわからない。



「でも冷やさないと・・。」


「わ、僕はへっちゃらだよ?大丈夫だから!」



顔からは血の気が引いていき、全身からはダラダラと汗が滴り落ちていく。
これは危険だと思ったその時、



「ティム、寝るぞ。」



と言う船長の声が低い声が私を呼んだ。