船長の名前はアルバート。
ここにはまだ居ないけれど、副船長は彼のことを唯一アルと呼ぶ親しい人物。
今は訳あって別々に行動しているようで、私は彼のことをまだ見たことがない。



「てめぇら何度言ったらわかるんだ?それともまた餌にされてぇのか?あ"ぁ?」


「やだなぁ、船長!悪いのはヴァイスですってば!」


「いやいや、船長騙されないでください。ロンです。」


「ほぉ。互いに仲間を売るとはいい根性してるな。
そろそろ"アイツ"の居る海域だ。吊るしてやろうか。」


「「かっ、勘弁してください!」」



- - -アイツ?



「・・それともティムの銃の練習台どちらがいいか選べ。」



「「「銃?!」」」




ただ見ていただけの私までも声が漏れてしまった。
今のニュアンスだと私もこの先、銃を使うかもしれない言い方だった。




「わたっ、僕はっ、銃など使ったことはありません!見たこともなければ、触ったことも・・。」


「そうですよ、船長!
ティムは元々一般人です。使う必要はないと思われますけど・・。」


「てめぇの身はてめぇで守れってことだろうが。
この先人質にでもされたら厄介だしな。だったら護身用に覚えさせる。」


「僕は・・」




"人は撃ちたくない。"

そう言いたかったが、船長の目は有無を言わせない眼(まなこ)で私を見た。



- - -こ、怖い。



世間知らずな娘でなければ、今ごろ客船で呑気にティム兄さんのことだけを考えて過ごしていたのだろうか。
そう考えると泣きたくなる。




「さぁ、てめぇらどちらか選べ。」


「「もちろん、ティムの練習台で!!」」


「・・お前ら即答なのはいいが、意味分かって言ってるのか?」


「「え?」」


「練習台ってことはお前らは"的"だ。わかるか?」


「・・・。」


「・・・。」


「・・・。」


「「「「・・・。」」」」



"的"?



その後ロンとヴァイスの悲鳴と、ティムの悲痛の叫び声が永遠と船内に続くのであった。