ぞくり。
目の前には机のなかを覗き込むようにして、見たこともない人が立っていた。
銀色の髪に右目には黒い眼帯、左目はグレー色の瞳。


彼は私を見るなり、にっこりと微笑んだ。



「・・・。」


「・・・。」



今、「オルコット家の箱入り娘」と聞こえたのは気のせいだろうか?



「い、今オルコッーー・・ひっ!」


「黙れよ。」


「!」



首もとに当てられた冷たいものが、私を恐怖へと陥れた。



- - -ナ、ナイフ!



カタカタとからだも震え出す。



「アル・・たちは死んじゃったのですか?」


「うん、殺しちゃったよ?」


「・・嘘・・・。」


「ほら、これ見ればわかるかなぁ?」


「!」



男の手に握られていたのは、アルの金色に輝く髪の毛。

ぞくり。
それを見ただけで喪失感と絶望感に包まれていく。


あんなに優しくしてくれたアルやロン、ヴァイスが死んでしまった。



「・・嘘。」


「アルったら君を守るのに余所見するからイケないんだよ。」


「おぞましい人っ!!」


「アルたちをっ!アルたちを返して!」


「クスクス。」



眼帯を付けた男は楽しそうに笑っている。

最悪だ。
人前でこんなにも涙を流したと知られたら、オルコット家の名に傷が付いてしまう。

ティム兄さんを失ったときも、人前で泣かずに、マーリンと隠れて泣いていたはず。



- - -どうしてこんな涙が?




「オルコット家が取り乱すなんて珍しいね。」


「アルたちを返して!」


「・・いい加減にしろ、マーク。」


「あ。アルじゃん!」


「え?」



恐る恐る後ろを振り向けば・・



「・・アル・・・?」


「起きたのか、マリア。何で泣いてんだよ。」



打ち破られたドアの壁に寄りかかるアル船長。

無傷。



「ふふふ~♪僕がちょっといじめちゃった!」


「ふざけんなよ、マーク!」




方針状態の私。



- - -どういうこと?