バシャアアァァァァァァン!




水面に何かが落ちる音が船内に轟いた。
それと同時に船員たちもバタバタと動き出す。



「せーーーんちょおお!襲撃ですけど、どうしますか~?!」


「チッ。」



船室の向こう側で緊張感のない声をあげるロン。

「襲撃」と言う言葉を意味にするだけで私は恐怖心からからだが震え出してしまい、アルの服をきゅっと握る。

そしてそれに答えるように頭を優しく撫でると、


「だり~けど取りあえず向かい打て!」



・・と適当な返事をする。



- - -え?!攻撃されてるんじゃないの?!




「マリア、一度しか言わねぇからよく聞けよ?」


「い、一度だけ?」


「俺が出て行ったら鍵を閉めること。」


「ははは、はい!」


「そしたらどっかに身を潜めろ。そうだな・・この机の下にでも。」


「机ですね、はい!」


「あと俺だとわかるまで絶対に開けないこと。わかったか?」


「・・・。」


「マリア?」




アルを見上げるとブルーの瞳には、くっきりと私が映り混んでいる。
金髪色の長い睫は、こういう状況がよくないときでも色っぽい。



「アルは必ず帰って来てくださいますか?」



初めての敵船同士の戦いの場に直面して、不安だらけで落ち着かない。

本当はアルにずっとそばにいてほしい気持ちでいっぱいだったけど、そうはいかない。
何故なら彼は船長。



「・・何だ、恐くて一人は嫌か?」


「そっ、そんなことありません!」


「クククク。」




こんな危ない状況でもアルは至って冷静。
それどころか冗談も言えてしまうほど、余裕綽々だ。



- - -ムカつく・・。



だけど彼の笑った顔を見れただけで若干恐怖心が消えて、震えも止まってしまった。



- - -悔しい。



「じゃあ言う通りにしろよ!」


「あっ。」




そう言うと瞬く間にアルの姿はドアの向こう側。



ガチャリ。
取りあえず彼の言われた通り鍵を閉めて、ドアにもつれるように座り込んだ。



「・・私、どうしちゃったのかしら。」



ワアアアァァァァァァァァッッ!




ドアの向こう側から男たちの声が轟く。
そのなかにアルもいる。



「・・・アル。」



一瞬目を閉じて彼の言われた通りに机のなかに潜り込む。



- - -みんな無事でいて。




からだを小さく丸め込むと、洋服からアルの香りがして一気に穏やかな気持ちになって行く。


私はそのままゆっくり目を閉じたのだった。