「お……俺はゼルって言います、リヴィエルさんに憧れてるんです。」

スーツをビシッと着込んで眼鏡をかけたとても真面目そうな男だ。しかし言っている事がリヴィエルにはいまいち飲み込めなかった。

「憧れ?私は憧れられる様なことは何もしてないわ」

「実は俺もファントムで、……嫌われるのが怖くてネイダ以外の友達に打ち明けることも出来ないでいるんです。」

ゼルは真剣な顔つきで話を続ける。

「リヴィエルさんは魔導士の名家の生まれ故にファントムであることを隠すことも出来ないのにあんなに人気で……」

その時、廊下の方から足音が近づいて来た。

ゼルはハッとしたように口を紡ぎ、上着の大きな裏ポケットから何かを取り出した。